「家族が面倒を見るのが当たり前」という価値観の限界

訪問看護の基本的な理念は、住み慣れた家で医療を受けることで安心感を得たり、QOLの改善をすることです。このこと自体は良いのですが、今も日本社会には病人や高齢者、障がい者などの面倒は家族が見るべきという思想があるように感じられます。もっと言えば、これに「子供」を加えても良いと思います。
その中でもとりわけ、家の中のことなので世話は女性がやるものという思想も残っているとお感じの方は多いのではないでしょうか。
訪問看護の現場と向き合っていると、こうした考え方がご家族をどれだけ苦しめているかが分かります。特に自分でこうした方々の世話をしたことがない人ほど、「家族がやって当たり前」「嫁がやって当たり前」と思っている節があるので、理解が進んでいないことが分かります。
介護や看護、子育てにいたるまで「人のお世話」には、それぞれのプロがいます。そういったプロと比べると、いくら身近な存在のご家族とはいっても専門の教育や訓練を受けたプロではありません。そんな方々にプロと同じ仕事を求めるのは酷というもので、それができていないことを責めたりするのは、さらなる不幸を生んでしまいます。
プロに任せられることはプロに任せるというのは、訪問看護にも当てはまります。訪問看護は在宅医療の一環として行われるので、他にも医師や理学療法士などのプロが関与します。こうしたプロが関わることでご家族の負担が軽減されるのであれば、それはとても意義のあることだと思います。
プロに任せることは怠けているわけでも、恥ずかしいことをしているわけでもありません。患者さんご本人にとっても有意義なことなので、古い思想にこだわりすぎず、気軽に相談をしていただければと思います。

訪問看護の世界も例外ではない、看護師不足

医療の世界だけでなく、広く一般の方々にも看護師不足の問題は見聞きされていると思います。この問題が叫ばれるようになってからずいぶん経ちますが、現場ではそれほど改善はしておらず、依然として看護師不足の状態が慢性化しています。
そんなに足りないのなら学校を増やして資格を持っている人を増やせば良いのでは?と感じる方もおられるでしょう。それはごもっともなのですが、実は看護師の有資格者自体は毎年1万人近く続々と誕生しており、何も対策をしていないというわけではありません。ただし、いくら足りないからといっても資格を大盤振る舞いしてしまうと命に関わる仕事だけに、リスクが大きくなってしまいます。適正と適切なスキルを持っている人以外に資格を与えることができないのも、看護師という職業の難しさです。
では、有資格者がこれだけ続々と誕生しているのに現場で人手が足りないというのは、なぜでしょう?その原因を1つに特定することはできないのですが、「資格を持っているのに入職していない人が多い」ということが挙げられます。
以前は看護師のことを「看護婦」と呼んでいたように、今も看護師は女性の職場というイメージが強くあります。女性が活躍しやすい職業として人気が高い一方で、結婚や出産、育児といった女性特有のライフイベントによって離職をしたり、その後の家庭との両立が難しいという理由で資格を持ったままどこにも入職していない人が増えてしまうといった事情があります。
病院側もさまざまな対策は打ってはいますが、看護師の業務範囲が広くなって多忙になっていること、また患者さんの症状によって看護師の業務が増えていることなどを考えると、理想と現実のギャップのようなものを感じます。
訪問看護の世界も例外ではなく、看護師不足は慢性的です。訪問看護ステーション「おとのい」でも看護師さんが働きやすいような仕組みや魅力の発信などに工夫をしています。
何もせずにただ「人手が足りない」と言っているだけでは結果につながらない世の中なので、看護師さんの募集においても主体的に努力をしく必要があると常々感じさせられます。